病院薬剤師の業務的書付

中小病院薬剤師の仕事関係メモ。まずは「はじめに」の記事をご覧ください。※薬物治療に関する個人的なご相談は受けません。

「ロスバスタチン(RSV) とマグネシウム含有製剤の併用がLDL-Cに与える影響」

ロスバスタチン(RSV)とマグネシウム含有製剤の併用がLDL-Cに与える影響

https://ci.nii.ac.jp/naid/40020977341

 

【論文のCQ

Mg含有製剤とRSV同時服用で吸収率が最大で50%低下する報告あり。(PMID: 18355422)
実際のLDL-Cに対する影響はどうなのか?

 

電子カルテシステムをレトロスペクティブに調査。

 

【論文のPECO】

P:2010年1月~2014年11月、日本の某大学病院、

RSV2.5mg/日を初めて開始した患者

(除外:他の脂質異常症治療薬あり、
RSV血中濃度に影響する併用薬のある患者、
Mgを自己調節している症例)
E:Mg併用群39人
(Mg250mg併用7人、330mg併用32人)
C:Mg非併用群58人
O:1ケ月後のLDL-C変化率への影響

 

【結果】

C群のLDL-C
167.5±49.1㎎/dL(投与前)
→102.7±36.4㎎/dL(投与1ヶ月後)
変化率-37.3±20.6%

 

E群のLDL-C
154.3±35.6㎎/dL(投与前)
→97.3±24.5㎎/dL(投与1ヶ月後)
変化率-35.6±15.7%

 

両群ともLDL-Cは有意に低下している(p<0.001)
重回帰分析の結果、Mg含有製剤併用の有無は、LDL-C変化率に対して有意な因子とならなかった(回帰係数8.02,p=0.262)

 

【論文の考察】
・RSVは投与後4~6Wが最大効果だからその値を使った(PMID:12505568)


・一般的にRVS2.5㎎でのLDL-C変化率は40%程度で、今回の結果と合う(PMID:21498906、15037821)


・PMID: 18355422と違う結果が出たのは・・・


①人種間におけるRSVのAUCの差が影響してる?
→日本人はRSVのAUC高い(白人の2倍)(PMID: 16198652)
→肝トランスポーターOATP1B1の遺伝子多型の割合が、アジア人で高いため
RSV(と活性代謝物)の濃度が高くなる(PMID: 25630984)


②Mg投与量が2倍違う
今回の平均Mg投与量1回312.5±33.1㎎、PMID:18355422は1回780㎎


・リミテーションは「下剤としてMg自己調節するケースが多くて症例数少なくなっちゃった」

 

【今回の論文を受けてどう感じたか】

わざわざ用法変えるほどは影響しないのかも。
完全同時内服になる人は、LDLの落ち方みて判断すればいいか。
そもそも下剤としてMg使うなら空腹時(酸性条件下)がbetter

→最初からMgを寝る前か夕食前で処方提案する?

 

疑問としては

・Mg併用でRSV血中濃度落ちることの作用機序は不明扱いのまま?

・この場合、充分なサンプルサイズってどのくらいになるのか?

 

せん妄勉強会まとめ

評価を充実することが目的じゃなくて

アクションに繋げることが大事

そして見ていることを伝える

→肯定評価を行いモチベーションを保たせる

 

「不眠・せん妄に対する実践的・効果的な多職種アプローチ」

 

見逃しのリスクを高めるもの@看護師

1:認知症:治せるせん妄なのに見逃される

2:80歳以上:年齢のせいでしょ

3:視覚障害

4:低活動型せん妄:notうつ病

論文によれば、低活動型は30ー50%とも、そして全群で過活動型より多い

見逃す理由→家族や医療者は困らない→患者はつらい(混乱・幻覚)

うつ病と間違えると治療もケアも逆だから悪化する

 

また元々精神疾患があるとせん妄は見逃されやすい

 

ともかくスクリーニング大事:CAMでもDSTでもいいから持続可能なものを選択する

せん妄でほぼ100%あるのは注意力障害(と夜間睡眠障害

注意力障害チェックにはSerial7(100から7を順番に5回引いてください)

→計算問題にしないこと!何を引くんだっけとなるときは答えを言いたい気持ちを我慢して「それも思い出しながら計算をしてください」等と返す

→質問を聞いていたか、最後まで覚えていられるか、何回引くかなどの対応をみる

「体がつらいとぼんやりすることが多いので、皆さんに聞いているのですが答えていただけますか?」とクッションいれるの大事!

(それでも怒る人はすでにせん妄かも)

 

アルコール評価にはAUDIT-C

 

せん妄直接因子としてBZP

6ヶ月以上定期服用患者は依存形成ありとして、同量継続

それ以下ならBZP中止・変更している

時間があるならベンゾ置換やOFFの相談を先にしておいては

 

睡眠衛生指導:眠くなってから布団にはいること、就寝時間にこだわらない、朝は同じ時間に起きる

 

非薬物治療大事!

本人にとっての不快を快に、非日常を日常に近づける

例)ICUでの補聴器使用は、夜間はOFFにしたほうがいいかも

 

多職種スタッフ(DrNrsPhOTPT)・患者家族への教育大事

岡大「せん妄パンフレット」「VTR せん妄をご存知ですか?」活用して

 

(準備因子、直接因子、促進因子については各々検索してください)

医療薬学会2018レポート

シンポジウム22「実践!薬学臨床推論ケースカンファレンス」 

 

ケースカンファレンス形式のシンポジウム初参加でした。

質問や意見が飛び交い、すげえええとも思ったし、隣の人と意見交換も出来たし

会場全体が盛り上がりました。

あの熱気を思い出しつつ。

適当まとめ(おい)

 

薬学領域における臨床推論は、患者の状態把握、副作用の判断、コミュニケーションなど様々な場面で活用されるが、体系的に学ぶ機会が少ない。 

今回はケースカンファレンスの手法で、提示者が病歴や所見を提示し、鑑別を挙げ、どのように問題解決にアプローチしたか推論内容を述べる。

聴講者は提示された情報から推論し、質問や意見をする。

今回聴講者に学んでほしいのは一症例ずつのテクニックというよりも考え方の流れである。 

 

高張性脱水なのに低比重尿のまま

→尿崩症?→だとすれば 中枢性?腎性?→薬剤性

→高Ca血症:エディロールで起きやすい印象

→D3製剤は副甲状腺機能亢進症を顕在化する

→Ca↑P↓

→PTHも測定しFA。

 

アルブミン血症時はCa値は補正してから評価すること!

みかけの正常値がありうる! 

 

ベースラインの確認大事!

パ病は必ず片側から始まり、年単位で両側に進行する

薬剤性パ症は最初から両側で始まり、発症は投薬開始後20日以内、歩行障害から始まる例が多い

 

学びのスタイルはサイズも考えて組み込むことが重要

→人は20分しか集中できない

→ラーニングピラミッド(学習方法と平均学習定着率の関係)におけるアクティブラーニングの効果を合わせて考えると、Small Group(10名程度)のケースカンファ(自施設例)が最も有効

 

薬学臨床推論は セルフケア と 副作用推論 が二大柱

臨床推論公開講座

2019/2/2

「有害事象評価の最新トピックと臨床推論の重要性」

 1.GPSP省令改正の背景と意義

2.実症例でみる有害事象に対する臨床推論アプローチ

3.副作用の臨床推論をどう学び、どう教えるか

4.医療機関からの副作用報告の重要性ー市販後安全対策への活用ー

 

2と3が現場の話、1と4がその先の全体に関する話。

新しい視点・組み合わせの公開講座だったと思う。

 

1.GPSP省令改正の背景と意義 ざっくり抜粋

 

GPSP省令

「使用成績調査(観察研究、ほぼこれ)」

「製造販売後臨床試験(介入、まれ)」

→改正で「製造販売後データベース調査(レジストリ・レセデータ・カルテデータ)」が増えた

使用成績調査も

一般使用成績調査

特定使用成績調査

使用成績比較調査(コホート

に分かれた

 

なぜ?→従来の使用成績調査では他剤との比較ができず、リスク管理に利用できなかったから(費用は膨大なのに)

→改正で、評価に当たって原則対照郡を設定した上での実施が望ましいと判断された

 

問題は解決されたのか→NO、そもそも薬害を見破ることは簡単ではない

例)スモン病、Rofecoxib

 

その中でもやはり現場の情報があがることが一番有用なのでは

→イベントドリブン、副作用ドリブンも、リスク増が問題となる副作用の視点で見ると、病名の信憑性に懸念のある医療データベースだけでスッキリ解決できるものは少なそう

「日本における傷病名を中心とするレセプト情報から得られる指標のバリデーションに関するタスクフォース」

→Webのテキスト・意味分析で副作用を見守れないか? 

→各種ノイズ(薬を探したいときは薬指とか薬師寺とかがノイズになる)の除去が必要

あとはテキストマイニング機械学習スマホアプリでの医薬系研究なども行われている

 

疾患レジストリへの期待

FDA Pregnancy Registries 日本でも出来ないか

 

2.実症例でみる有害事象に対する臨床推論アプローチ ざっくり抜粋

 

臨床推論とは~薬剤師が臨床推論で出来ること~副作用を疑ったときの3つのアプローチ

↑この辺りは黄色い本参照

 

CIOMS appendix 7に書かれていることは臨床推論そのもの(ナランジョも)

 

薬歴の把握はしっかりとhistoryを追うこと(入院前や持参薬についても)、これで薬物療法の評価・設計が決まることもある

 

副作用かも?となったときは

まずは「臨床的対応」→減量・休薬・中止の判断、副作用の治療、代替薬の提案

つぎに「フォローアップ」→電子カルテ登録、お薬手帳記載、場合によっては副作用被害救済制度の紹介および適用可能性の評価

そして「医薬品副作用安全性情報報告・症例報告」→未来・将来の患者への情報発信

 

臨床推論の思考で3ステップを踏むことで、副作用の個別報告の質を高められ、医薬品の安全性情報を育むことができる

 

3.副作用の臨床推論をどう学び、どう教えるか ざっくり抜粋

 

北海道科学大学、卒後セミナーとして臨床推論実施中

薬学部4年後期授業で臨床推論実施中

 

臨床推論の授業で大切なことは、考え方のフレームを学ぶこと

もともと土台となる病態や解剖の正しい知識と情報を、有機的につなげる作業

また、学生は間違っても問題なく、のびのびと思考してもらう

疾患をパッケージで捉える→そこから一次情報につなげられればBest

 

まずは「ワンセンテンスサマリ」作成

次に「プロブレムリスト」作成:事実を記載していく、(勝手に)病名をつけない、認知バイアスをできるだけ排除

そして「薬剤性以外の可能性」

「不確かさもそのままにDrへどうアクションするか」

 

初頭効果(primacy effect):最初に聞いたことは印象に残りやすい

例えばDrから「味覚異常の患者」と聞いていても、まずは自分で情報収集(患者面談含む)

そして言葉を鵜呑みにしない(Patients tell a "story")

原因がよくわからない訴えは、無理に医学用語で記号化しようとせずありのまま、言語化されたものを受け止める

 

4.医療機関からの副作用報告の重要性ー市販後安全対策への活用ー ざっくり抜粋

 

ドラッグラグが無くなった現在、市販後安全対策が重要

PMDAで「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索ページ」が公表されている

 

特に報告してほしい事象:

未知で重篤な事象:RMPの「重要な潜在的リスク」「重要な不足情報」

添付文書に記載あるが、重篤性や転機が予測できない事象:その他に載っているが死亡重篤、低いはずなのにここんとこよく起こる

保健衛生上の危害発生か拡大防止のために報告が必要な事象

→医薬関係者の感じる「何か違う」を報告してほしい

徒然なるままに

兼好法師のような文才はないのですが、徒然に。

下書きにひとつ(勉強会報告)入れたままで、今日は適当な記事を書いてみようと思う。

 

あなたは、何のために、何がしたくて生きてますか?

 

私は、お金を稼いで生活を回して、たまに遊ぶために生きています。

その手段として仕事をしています。

誰かのためとか、何かのため、ではありません。

誰かのためと言うならば、基本的には自分のためです。

そこは揺るぎません。

 

そもそも、人は本当に誰かのためになんて生きられるのか。

本当は自分のためなのに、誰かのためとすり替えているのではないかと思ってしまいます。

それが悪いわけではないけれど、摩り替えは生きづらさや苦しみを生む気がしていて。

 

ばかばかしくて、恥ずかしいことばかりでも、そのまま生きることが、本質的には楽なんじゃないかななどと思っています。

 

そんな三連休の中日です。

 

年末のご挨拶

この一年何してた?と、問われたら

「…わからん!」と答えるでしょう。

仕事的には、明確な前進はなかった一年でした。

(部署的な人員的前進はあったものの

それが明確に前進かは今だ不明)

自分の気になるカードを集めていく一年だったように思います。

そこに正直コストもかかった(苦笑)

ここからは、もう少し的を絞りながらコスパよく情報収集、勉強、現場還元、承認欲求充足(笑)、評価、フィードバック、と回していく必要があります。

 

誰も、やってくれないから、自分でやるしかないのだと。

ちっぽけな物事のなかで思うのです。

 

みなさんの一年はどうでしたか?

今年はありがとうございました。

来年もよろしくお願いします。

 

よいお年を。

【続】低用量ドロペリドール静注の制吐作用について

ph-hagi-memo.hatenablog.com

 

【希釈】について追記。

添付文書に記載があるのは「ブドウ糖液等に希釈」のみ。

IFに配合変化表あり、生食希釈もOKと確認。

 

使用量他について追記。

 

麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン第3版

>Ⅲ静脈関連薬>ドロペリドール より

http://www.anesth.or.jp/guide/guideline-iyakuhin-index.html#g03

【使用量】

制吐薬としての成人初回投与量は最大2.5mg(筋注・静注とも)

追加投与は1.25mg(利益が危険を上回るときに限る)

PONV予防は1.0~1.25mg(麻酔前に静注)

【薬効・ADME】

PONV予防の作用時間は短い。(2時間程度か PMID:19605409)

代謝、投与量の約10%は未変化のまま尿中排泄、ドロペリドールとその代謝物は尿と糞便中に排泄。

【副作用】

錐体外路症状不整脈(QT延長・心室性頻拍)に注意

 

医療薬学会口頭演題59より

【使用量】

PONV予防時のプロトコルにおいてドロペリドール用量記載あり。

ドロペリドール0.25mg~1.25mgを予防投与に使用しているとのこと。

 

【追記を受けてどうするか】

「生食5mLで希釈しゆっくり静注」と対応した。

肝機能に不安がある患者では、0.25mgでの投与も考慮。

投与後の副作用モニタリングを行う。

(前回の記事内容に引き続き)1mgを超えない用量設定で使用する。