【個人的背景】
中枢性および末梢性嘔吐の薬物治療は、なかなか困難だ。
当院で難渋するのは、脳幹梗塞時の嘔吐と、末梢性めまいに付随する嘔吐だろうか。
まず原疾患治療を行っていることを確認し
(末梢性めまいの原疾患治療って何だろうと思いつつ取りあえずここではスルー)
対症療法という前提は伝えつつ
(薬が万能なわけはない)
内服薬ならメトクロプラミド錠(プリンペラン®)・ドンペリドン錠だが・・・
内服できる状況なら苦労しないわけで・・・
内服以外でとなると、坐剤か注射。
当院にはドンペリドン坐剤(ナウゼリン坐®)の採用がないので、プリンペラン注®の一択となる。
たいてい2~3A ivしても嘔吐がおさまらない時に相談がくる。
さて、次の一手として何が提案できるか。
確か前にどうしようもない時の制吐にドロペリドール注(ドロレプタン®)も使うって聞いたような。
検索してみた所、ドロペリドールの術後悪心・嘔吐(PONV)予防の論文がヒットしたのでとりあえず読んでみる。
(批判的吟味なし)
【論文タイトル】
Low-dose droperidol (≤1 mg or ≤15 μg kg-1) for the prevention of postoperative nausea and vomiting in adults: quantitative systematic review of randomised controlled trials.
成人の術後悪心・嘔吐の予防のための低用量ドロペリドール(1mg以下または15μg以下):ランダム化比較試験の定量的な体系的レビュー
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22488335
(↓こちらはフルテキスト読めるリンク)
journals.lww.com
【論文内容】
(ぐーぐる先生にアブストラクトの翻訳をお願いしました)
CONTEXT:ドロペリドールは、ヨーロッパ諸国の術後悪心・嘔吐(PONV)の予防に広く使用されています。低用量ドロペリドールがPONVの予防にどのように有効であるかは不明である。
目的:成人におけるPONVの予防における低用量ドロペリドールの有効性を試験し、用量反応性を試験すること。
設計:メタ分析を用いたランダム化比較試験の系統的レビュー。
データソース:2011年6月まで、電子データベース(Medline、Embase、Central)での包括的な検索。検索されたレポートの参考文献から追加の試験が得られました。言語制限は適用されませんでした。
適格基準:全身麻酔を受けており、PONVに関する報告をしている成人のプラセボと比較して予防的静脈内ドロペリドール≦1mgまたは≦15μgを試験する無作為試験。
結果:25件の試験(2957例)を分析した。用量は0.25から1.0mgまで変化した。早期悪心の予防のために(術後6時間以内)、相対リスク(RR)は0.45(95%CI、0.35〜0.58)であった。(NNT)は、低、中および高ベースラインリスク(すなわち、コントロールイベント率25,50,75%)について7,4および2であった。RRは0.65(95%CI、0.57〜0.74)、NNT 11,6および4であった。後期悪心(24時間以内)の予防のためにRRは0.74(95%CI、0.62〜0.87)であった。 、NNT 15,8、および5。嘔吐の予防のために、RRは0.61(95%CI、0.47-0.80)、NNT10,5および3であった。ドロペリドールは頭痛のリスクを減少させたが、不穏さのリスクを高めた。これらのアウトカムについて、用量反応性の証拠はなかった。鎮静またはめまいの発生率に差はなかった。ドロペリドール0を受けた2人の患者。625mgに錐体外路症状がみられた。心臓毒性データは報告されていない。
結論:1mg以下のドロペリドールの予防投与量は制吐薬である。有害な薬物反応は用量依存的である可能性が高いので、1mgを超える用量の使用を止める議論がある。
【勝手にまとめ】
PONVに対してドロペリドール1㎎以下の投与は制吐作用が有用であった。
しかし、それを超えると副作用(錐体外路症状)の頻度が上がるため注意。
【論文を受けてどうするか】
ドロペリドール注(ドロレプタン®注射液25㎎/10mL)
1㎎(=0.4mL) 嘔気時 iv
が提案できる。
緩徐に静注したいだろうし、そうなると希釈した方がいいだろう。
生食希釈でいいのかな。
そのあたりはまた今度。