臨床推論公開講座
2019/2/2
「有害事象評価の最新トピックと臨床推論の重要性」
1.GPSP省令改正の背景と意義
2.実症例でみる有害事象に対する臨床推論アプローチ
3.副作用の臨床推論をどう学び、どう教えるか
4.医療機関からの副作用報告の重要性ー市販後安全対策への活用ー
2と3が現場の話、1と4がその先の全体に関する話。
新しい視点・組み合わせの公開講座だったと思う。
1.GPSP省令改正の背景と意義 ざっくり抜粋
GPSP省令
「使用成績調査(観察研究、ほぼこれ)」
「製造販売後臨床試験(介入、まれ)」
→改正で「製造販売後データベース調査(レジストリ・レセデータ・カルテデータ)」が増えた
+
使用成績調査も
一般使用成績調査
特定使用成績調査
使用成績比較調査(コホート)
に分かれた
なぜ?→従来の使用成績調査では他剤との比較ができず、リスク管理に利用できなかったから(費用は膨大なのに)
→改正で、評価に当たって原則対照郡を設定した上での実施が望ましいと判断された
問題は解決されたのか→NO、そもそも薬害を見破ることは簡単ではない
例)スモン病、Rofecoxib
その中でもやはり現場の情報があがることが一番有用なのでは
→イベントドリブン、副作用ドリブンも、リスク増が問題となる副作用の視点で見ると、病名の信憑性に懸念のある医療データベースだけでスッキリ解決できるものは少なそう
「日本における傷病名を中心とするレセプト情報から得られる指標のバリデーションに関するタスクフォース」
→Webのテキスト・意味分析で副作用を見守れないか?
→各種ノイズ(薬を探したいときは薬指とか薬師寺とかがノイズになる)の除去が必要
あとはテキストマイニング&機械学習、スマホアプリでの医薬系研究なども行われている
疾患レジストリへの期待
→FDA Pregnancy Registries 日本でも出来ないか
2.実症例でみる有害事象に対する臨床推論アプローチ ざっくり抜粋
臨床推論とは~薬剤師が臨床推論で出来ること~副作用を疑ったときの3つのアプローチ
↑この辺りは黄色い本参照
CIOMS appendix 7に書かれていることは臨床推論そのもの(ナランジョも)
薬歴の把握はしっかりとhistoryを追うこと(入院前や持参薬についても)、これで薬物療法の評価・設計が決まることもある
副作用かも?となったときは
まずは「臨床的対応」→減量・休薬・中止の判断、副作用の治療、代替薬の提案
つぎに「フォローアップ」→電子カルテ登録、お薬手帳記載、場合によっては副作用被害救済制度の紹介および適用可能性の評価
そして「医薬品副作用安全性情報報告・症例報告」→未来・将来の患者への情報発信
臨床推論の思考で3ステップを踏むことで、副作用の個別報告の質を高められ、医薬品の安全性情報を育むことができる
3.副作用の臨床推論をどう学び、どう教えるか ざっくり抜粋
薬学部4年後期授業で臨床推論実施中
臨床推論の授業で大切なことは、考え方のフレームを学ぶこと
もともと土台となる病態や解剖の正しい知識と情報を、有機的につなげる作業
また、学生は間違っても問題なく、のびのびと思考してもらう
疾患をパッケージで捉える→そこから一次情報につなげられればBest
まずは「ワンセンテンスサマリ」作成
次に「プロブレムリスト」作成:事実を記載していく、(勝手に)病名をつけない、認知バイアスをできるだけ排除
そして「薬剤性以外の可能性」
「不確かさもそのままにDrへどうアクションするか」
初頭効果(primacy effect):最初に聞いたことは印象に残りやすい
例えばDrから「味覚異常の患者」と聞いていても、まずは自分で情報収集(患者面談含む)
そして言葉を鵜呑みにしない(Patients tell a "story")
原因がよくわからない訴えは、無理に医学用語で記号化しようとせずありのまま、言語化されたものを受け止める
4.医療機関からの副作用報告の重要性ー市販後安全対策への活用ー ざっくり抜粋
ドラッグラグが無くなった現在、市販後安全対策が重要
PMDAで「副作用が疑われる症例報告ラインリスト検索ページ」が公表されている
特に報告してほしい事象:
未知で重篤な事象:RMPの「重要な潜在的リスク」「重要な不足情報」
添付文書に記載あるが、重篤性や転機が予測できない事象:その他に載っているが死亡重篤、低いはずなのにここんとこよく起こる
保健衛生上の危害発生か拡大防止のために報告が必要な事象
→医薬関係者の感じる「何か違う」を報告してほしい